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『いつかの空、君との魔法II』感想

 角川スニーカー文庫、藤宮カズキさんの『いつかの空、君との魔法II』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にどうぞ(前巻『いつかの空、君との魔法』のネタバレが含まれます)。

その後のカリムの話、というより

 前回、揺月を助けるついでにアリステルからダスト層雲を払ったカリム。『青空のヘクセ』の二つ名を揺月とともに与えられ一流ヘクセとなったカリムの話……ではなく、そのカリムに恋心を抱くレイシャ・クリエの話を中心に、青空を取り戻したことにより発生した、<宿無し>と称される精霊の対処、青空を記念したブルースカイ・フェスティバルなど、前回に比べると割と盛りだくさんな内容。

 レイシャ自身は前回も登場していますが、前回は話の中心がカリムと揺月だったためか出番はそれほど多くはありませんでした。それでも「ああ、カリムのことが好きなんだ」ということは充分に伝わっていたわけですが。個人的には、二巻が出たこともそうですが、その二巻の話がレイシャの恋についてだったことはいい意味で意外でした。ああ、一応いっておきますが、二巻が出たことが意外というのは、まあ以前書きましたが「完全に単巻もの」だと思っていたからであって、作品自体は、って、これも前に書きましたが去年読んだ中で一位二位を争う好きです。

少し物足りないけど

 んで総評ですが、前回に比べると少しばかり物足りないかなぁと。カリムへの恋心を抱きながら、彼が揺月を好きであろうと考え一歩を踏み出せずにいるレイシャの葛藤と、<宿無し>が起こしたある出来事でよりかき乱されるその心は、前回から引き続く丁寧な描写も相まって非常に切ないのですが、前回にあったカリムと揺月のぶつかり合いだったりとか、揺月が精霊化してひどい焦燥に駆られるカリムとか、そういう部分と比してどうにも弱い印象。まあ、それはそのままカリムと揺月、レイシャ、この三人の関係性に置き換えられるのかな。

 あと思うところがあるとすれば、晴れた青空のようにこの作品には悪役がいないこと。悪役といっても世界征服だとかそういう意味ではなく、嫌な立ち位置の人間、嫌われ役のキャラという意味です。もっとも、作品全体の雰囲気としてそういった登場人物は無用かとも思いますし、いても違和感が出るだろうとは考えていますが。

2017年1月19日:筒狸

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