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『風見夜子の死体見聞』感想

富士見L文庫、半田畔さんの『風見夜子の死体見聞』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にでもどうぞ。

あっさり目の文体が吉と出るか否か

 最初に総括してしまいますと、決して飛びぬけたものがあるわけではないが、すっとのどを抜ける文体と軽やかな掛け合いで一息に読んでしまえる良作、といった具合でしょうか。物語の運びにしても決して奇をてらうものではないものの、だからこそすぐさまその世界に入ることができるという印象を受けました。

 陽太の一人称で描かれる本作、第一印象としては、「ずいぶんと淡白な文章だな」でした。これだけだと良しにも悪しにもとられますが、実際のところ良くも悪くも 、といったところ。

 会話劇を主体とした物語展開において、地の文で不用意に文字を飾るとテンポが殺されることになりかねず、とすればこの「淡白な文章」という印象も決して悪いわけではありません。ピアノの旋律が主体であるのにバックでドラムやらギターやらが延々と鳴り続けていても、聞き苦しいだけでしょうし。

 反面、 目立った技巧がないがゆえに、「これこそこの作者の文章である!」という部分が見えてこない。まあ本作の場合、氏のデビュー作でもあるわけで、果たしてこの文章が主人公である陽太の性格等を加味してあえて淡白にしたのか、それとも会話劇を得意とするがゆえの結論なのかは判断の仕様がないのも事実ではありますが。

個人的にこの文体は好き

 いろいろと書きましたが、好きか嫌いかでいうと私は好きです。欲を言えばこの人ならではのエッセンスがほしいと思うだけですし、それにそういう点がまったくないわけではない。 えらそうなことをいうようですが、このあたりはのびしろでしょうか。

 陽太は、ざっくりいってしまえば事なかれ主義の性格。「他人が火に包まれていたら、持っている水を自分にかぶせるような男」を自認し、周囲からもそういう認識を得ています。要するに本当の意味での一般的な男子高校生。もっとも私は、夜子との会話などから「本質的にはお人好しなのでは」という思いを持っていたわけですがはてさてその真相は……それは読んでからのお楽しみ、ということで。

2016年7月27日:筒狸

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