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『妖姫のおとむらい』感想

 ガガガ文庫、希さんの『妖姫のおとむらい』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にどうぞ。

特徴的過ぎる文体

 ある理由から放浪癖を持つ平良坂半が旅先で迷い込んだ空間。そこで出会った妖姫・笠縫。どういうわけか半は笠縫に対してわけの分からない上にどうしようもない食欲を催し……ざっくりとした冒頭のあらすじはそんな感じではありますが、その話の内容よりもまず先に、その特異な文体が目を惹きます。

 一言で言ってしまうと、ラノベっぽくない。というよりも小説全体を見通してもあまり見られない文体ではないでしょうか。読みづらさもあるようで、でも妙にすとんと落ちてくるような。どことなく古めかしい書き方に感じますが、かといって古典的かといわれると否。ここまで来るとこの表現を表現するに足る言葉を持たない自分がもどかしくもありますが、ともあれその不思議な文体は、半と笠縫の奇妙な関係、そして、おそらく舞台は現代なのに郷愁を漂わせる空気感とあいまってとても映えます。

短編集ではあるが

 物語は全四編からなる短編集といった感じ。まあ一冊の本になっているのだからわざわざ前の章を読み飛ばして先読みする人もそういはしないでしょうが、そうしてしまってもそれほど問題にはならないでしょう。勿論順番どおりに読むのが至極真っ当で一番良い読み方だとは思いますが。どの章においても、笠縫に出会ってからこっち、妙な空間に迷い込む癖がついてしまった半と、それを助けたり助けなかったりする笠縫を中心に、半の幼馴染で世話焼きのまつ璃や、笠縫とは別(?)の妖である玉串などを巻き込んだり巻き込まなかったりしつつ話が展開していきます。各話の題を見れば分かるとは思いますが、どの話も何らかの形でその場所にある奇妙な食べ物が関わっており、個人的に気に入りなのは笠縫との出会いを書いた第一話『風鈴ライチの音色』。

 では総評……といっても、上でほとんど書いてしまったので改めて書くのもおかしな話。またきっと、続きが出ることを期待して待ちます。第四話でのあのことやまつ璃のことも気になりますし。

 ところで、プロローグに名前だけ出てきた銀河キノコのグラタンと聞いて某神話の某キノコを思い出したのは私だけか?

2016年12月1日:筒狸

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