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『ハナシマさん』感想

 ガガガ文庫、天宮伊佐さんの『ハナシマさん』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にでもどうぞ。

幽霊か、人間か

 幽霊と人間、どちらが怖いかという問いは昔からよくあります。私としては実体がつかめない幽霊よりも目の前にいる人間のほうがよほど怖いと思いますがそれはさておき。

 あ、ちなみに私は幽霊の存在は肯定派です。私自身に霊感はありませんから見たことはないですが、だからといっていないと断言できるほどの知識もない。法学的な意味での悪魔の証明に近いものがあります。まあそれは私に限らずそうでしょうが。

 じゃあ心霊写真や心霊映像はどうなんだ。あれは幽霊の存在を示す証拠なのではないかといわれるとこちらに関してはやや懐疑的。まあこの話をするなら別記事作ってからにしましょう(作るとはいっていない)。

 閑話休題。『ハナシマさん』は言ってしまえばそういう話。購入したときの記事でチラッと触れましたが、これは有名な都市伝説が題材となっています。作中でもその都市伝説が言及されています(彼女の名前は改変されていますが)。もうひとつ、ほんのわずか隠し味程度に混ぜ込んでいるのかな。まあ都市伝説なんて語り継がれているうちに変遷するものですからそのあたりはなんとも言いがたいものがありますが。

ミステリであってミステリではない

 これは正直読む人間を選ぶでしょう。ミステリという表現は広義において間違ってはいませんが、推理小説的な意味合いで捉える人にとってはまったくお勧めできません。少なくとも現状においては。理由については本作のネタバレにも関与しますので明言は避けますが、ある登場人物の描写において、終盤の展開を予測することが困難であると感じたためです。また、別の登場人物についても少々疑問に思う点がないではない。ぶっちゃけてしまえば、果たしてこの人物は登場する必要があったのかと思ってしまうのです。

 よって、推理小説狙いの方はおとなしく創元推理文庫あたりに手を伸ばすことをお勧めします。私が読んだ中では、創元ではありませんが『古典部シリーズ』、『“文学少女”シリーズ』、『ウィッチハント・カーテンコール』あたりもいいかもしれません。まあ『ウィッチハント・カーテンコール』は若干正道とはずれるでしょうけども。

 また、推理小説云々にかかわらず物語として、ですが、どうにも主人公の不在感が否めない。タイトルの通り主人公は『ハナシマさん』なのか、それともあの人物なのか……その点で、少々焦点を合わせづらい作品と言えます。

 では誰にお勧めするかというと、まずはやはり都市伝説好きな方に、でしょうか。特に題材となった都市伝説が好きな方で、かつある程度のハッピーエンドをご所望の方に。単純に恐怖だけの存在である『彼女』を見る視点が変わるかもしれません。何せ『彼女』は、今もどこかでさまよっているわけですから。推理とかそういうのは度外視して、ひたすらエンターテインメントとして楽しむ方、かつ多少のホラー要素に対して問題がない方にはお勧めしたい。

これから先に期待

 先ほど、少なくとも現状においては推理小説としてはお勧めできないと申しました。なぜあえて現状においてはなのか。これは、本作がここで終わるのかどうかという点にあります。若干のネタバレになりますが、『ハナシマさん』という話はこちら一作で完結しています。ただ、今後この世界を舞台に何も話が出ないとは思っていませんし、出てほしいとも思います。個人的には、これはこの世界の長いプロローグなのだと考えていますので、ぜひとも続編を。

 まあこればかりは天宮さんのモチベーションと、いやらしい話ですが売り上げにかかることではありますので、一読者としてできることは新刊を買い続けることと、稚拙ながら感想を残すことだけですが。とするとこの拙文は果たしてそれに寄与できるのか。さっき私は否定的な文章投げつけてないか?

 まあいろいろと書きはしましたが、私は好きです。もともとこういうオカルト系が好きなのもありますが、人物の心理も伝わってきましたし、エピローグは少しばかりほろっとさせられました。最近歳食って涙もろくなってないか私。

2016年7月28日:筒狸

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