無銘図書館

『ハナシマさん2』感想

 ガガガ文庫、天宮伊佐さんの『ハナシマさん2』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にどうぞ(前巻『ハナシマさん』のネタバレが含まれます)。

二巻が出たよ! やったね!

 一巻感想の最後にも書きましたが、続編の刊行については予想していましたし望んでもいました。ただ、まさかタイトルそのままずばりでくるとは思ってもみなかった。何せ、ハナシマさんの話は一巻の時点で完結してしまっていたのだから。果たして彼女の再登場はあるのか、それとも単に続編という意味合いでこのタイトルになったのか。それはまあ、読んでから確かめていただくとして。

 今回話の中心となるのは、前巻でたびたび登場していた桜井道隆の知人であり、学内で極度の奇人として有名な草薙勾玉(こうぎょく)。こちらは華志摩さんとは違い一応全うな人間ではありますが、極端にオカルトに傾倒する所謂オカルトマニアであり、その度合いたるやずいぶんとぶっ飛んでおり、ついたあだ名が『破滅的な美女(クラッシュビューティ)』。彼女の失踪から、物語が動き出します。

 失踪まで一章かけて彼女の人となりとか交友関係は描かれますので、キャラクターが掴みづらいということもなく、また、自然な流れで前巻の登場人物や事件(前巻の事件から半年が経過)と結びつけられており、さらにいえば前巻の重要なネタバレは行われていないので今巻からの読者にも優しい設計。まあ、流石に2と題されているものからいきなり読むという方はあまりいらっしゃらないかとは思いますが。

 個人的な印象としては、前巻から少々雰囲気が変わったなと。前巻はほぼほぼ単純なオカルトとして華志摩さんを描いていましたが、今巻は少しばかり色合いが違う。あまり言うとなんですが、心霊的なものに限らないオカルトにも踏み込んでいます。また、道隆が幾分か主人公的な立ち位置を獲得しつつあり、前巻にあった主人公の不在感は払拭されているかと。

 まあ前巻の最後に杜秋教授に宣言したとおりといった感じで、やはり前巻は一冊丸ごと使ったプロローグだったわけです。まあ雰囲気が変わったといってもその点だけで、全体的な印象はほぼほぼそのままですが。道隆が自発的に行動を起こし、自然とそちらに目が行くため視点は定めやすくはなっています。

今回の都市伝説のお題は

 さてさて。勾玉先輩(道隆の呼び方に倣います)とは別に、用はオカルト的な要素としての話の中心となるのは『異世界へ旅立つ方法』。これについては実際に都市伝説としていくつか存在していますが、今巻に乗っていたものは中でも比較的有名なものでした。詳しいことに触れるのはやめておきますが、『ああ、懐かしいのが出てきたな』と、そういう場面ではないのにクスリとさせられました。

 では総評。多少の消化不良はありつつも、件の都市伝説がうまく調理されていると感じました。一部唐突な話はありましたが、それもまた調味料として利用されており、また大きく話から逸脱することもなくそちらに本筋が飲まれることもなかったのでエッセンスとしてよかったと思います。まだまだいろいろと謎は残っていますがそれは『3』以降に期待いたしましょう。

2017年1月21日:筒狸

『ガガガ文庫』関連記事