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『月とうさぎのフォークロア。St.3』感想

 GA文庫、徒埜けんしんさんの『月とうさぎのフォークロア。St.3』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にどうぞ。

夏だ! 海だ! 出たの秋だけど!

 監察との騒動の後、正式に直参として優月と美月を迎えた朔。その優月が率いる天月一家は、元は長い伝統をもつ歴史ある名門だった。その分所有するシマも経済的に優位な場所にあり、自身の死によって、天月一家が一時的にとはいえ衰退するだろうことと、それに伴うシマを巡る抗争が起きる可能性を予期していた優月の父親であり天月の先代は、周辺の組織にシマを貸すことで、平穏を保った……といった感じの『月とうさぎのフォークロア。St.3』は、これまでの月宮から離れ、天月一家の本拠地を舞台に繰り広げられます。

 先述の通り、天月一家は先代の死によって一度衰退しましたが、優月が朔の直参、月夜見一家の幹部となったことで再興を果たします。しかしながら天月一家のシマは周辺の組織に貸し出している状態で、そのことで少々揉めている様子。

 再興したのだから土地を返せという天月側と、はいそうですかと簡単にはいかない他の組織。その問題がどれほどのものかの視察のため、朔達は海を望む天月一家の土地へと向かい――はい、水着回です。

 序盤はほぼほぼこれまで通りラブコメエロコメ路線(?)ですが、瀬月内との会話などで状況がうまく開示されていきます。

 一巻で月夜見一家と素戔嗚組との間を取り持った天照会のことや、貸しジマの件に関わっている大規模組織・柾勝会のこと。地の文ではなく会話の中で自然と読ませてくれるのですんなりと頭に入ってきますし、何より没入感を阻害しない。細かいことですがこういうとこはやはり大事です。

本番はやはり後半

 で、ラブコメエロコメ路線ですが、比較的序盤で幕を下ろします。瀬月内が襲撃を受け重傷を負い、それからは箸休め程度にコメディが混じりはしますがほぼほぼ暴力沙汰と駆け引きの応酬。まあこのあたりはこれまで通りです。ただ、朔が確実に頭として成長している。

 瀬月内が襲われたことで頭に血が上った優月の暴走、それによる天月一家の危機。これに対して朔は自分や他の直参は直接的には動かさず、優月が自分で自分の危うさに気づくことを願いますが……

 それでは総評。二巻が正直微妙な印象だったのでこれはいい逆転でした。二巻のときの感想で「かませ」とまで言い切った春や鈴、それに二巻で加わった七莉。春の妹である冬にもちろん白。優月と美月も含めそれぞれがそれぞれの立場で活躍し、見せ場があります。朔も締めるべきところはしっかりと締め、よいまとまりでした。

 ……ただ、もしかして三巻で完結なのかな、と。あとがきの雰囲気ではそう感じましたし、話もいい感じに区切りができてしまったので。勿論続けることはできますが、果たして四巻は出るのやら。個人的には、白を無自覚に好き過ぎる朔がそれをしっかりと自覚するくらいまでは見てみたいわけですが。

2017年10月18日:筒狸

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