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『ギャンブル・ウィッチ・キングダム』感想

GA文庫、菱川さかくさんの『ギャンブル・ウィッチ・キングダム』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にどうぞ。

不幸だ……

 古代、魔女が策定したルールによって、賭け事の勝敗ですべてが決まる世界。その世界で、かつてすべてを奪われ、『運に見放されし者(ラックレス)』と呼ばれるウィルが、略奪者たる魔女に復讐するため知恵と策謀を巡らせ戦い抜く。ざっくりとあらすじを言ってしまうとそんな具合です。

 で、『運に見放されし者』、まあ要は不幸ということですが、読んでいて思い出したのは別レーベルで「不幸だ」と嘆いていた某氏。実際のところ度合いで言えば似たような立ち位置といえるでしょう。ウィルの場合職業=賭博師なので実被害的には彼よりも大きいでしょうし、ウィルはあらすじのとおりすべて、家族、友人、故郷でさえも失っているので、実際的にも大きいとは思います。言ってしまえば『ラノベ的不幸・上級』といった具合ですか。

 ……少々挑発的な物言いにはなりましたが、まあこういったことは昔からラノベではよくあること。そもそも『創作、ことラノベにおける不幸≠現実における不幸』だと解釈しているので、それを否定する意図はありません。第一不幸の定義なんて人によって様々ですし――などと言い始めるときりがありませんのでこのくらいにしておくとして。

 ちなみに、賭博師の中には、魔女から気まぐれで『祝福』と呼ばれる能力を授けられた者もいます。一般に知られる条件としては『上位の賭博師であればあるほど手に入る可能性が上がる』といった程度の認識。ウィルは駆け出しの新米賭博師なので勿論持っていませんが、『祝福』を授かる際には賭博師は実際に魔女と対面することから、彼も(復讐のためという別の目的ではあるものの)上を目指しています。

 一方のヒロインであるところのリゼット。あえて記号に当てはめるなら、やはり『ツンデレ』でしょう。もっとも、読了時点ではまだツン要素が強い状態。なお彼女も賭博師ですが、通り名は『馬鹿正直(オールストレート)』。実際その通り、嘘がとんでもなく下手で、とにかくまっすぐです。

 そのほかにも魔女を信奉するリブラ教団の幹部で、食えないという印象のスタッドやその部下のスニル、賭博管理協会のアリシア、そして件の魔女など登場しますが、ひとまずは割愛。

古き良きラノベ

 では総評を。全体の印象としては一昔前のラノベでした。その印象の良し悪しは個々の判断にゆだねるとして、私としてはよかったと思います。真新しさはさほどありませんし、駆け引き、というかもう少し心理戦を濃く書いてくれたらなーなんて思いはしたものの、概ね面白かった。ただ、謎解きや伏線などは読みやすいため、そのあたりを楽しみにすると肩透かしを食らうかもしれないのと、(若干のネタバレを含みますが)ウィルが得た力や魔女という存在、そしてウィルをめぐる女性関係など現状では投げっぱなし状態ではあります。後者に関しては続刊に期待ということで。

2016年11月21日:筒狸

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