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『魔術学園領域の拳王』感想

 富士見ファンタジア文庫、下等妙人さんの『魔術学園領域の拳王 黒焔姫秘約』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にどうぞ。

イア! イア!

 魔術が現実として存在し、公に認知されている世界というのはラノベではよくある話ですし、であるならばその魔術を学ぶ学園が存在するのもある種当然の話。本作もその中のひとつであり、そこだけを見るならば真新しさはありません。そこにちょっとしたクトゥルフ神話要素が入ってきても……いや割とがっつりと入ってきてるぞこれ。まーたニャル様過労死するやつや。

 とまあ戯言はおいておくとして。この世界における魔術は上位存在、というかたぶん旧支配者とか外なる神々といったほうが分かる方には分かるかと。

 といっても、現状で名前が出てきたのはニャル様ことナイアー=ラトテップ(なお個人的な話ですが、私としてはナイアルラトホテップやニャルラトホテプのほうが呼び方としては馴染み深い)とあと一柱くらいですが。そのもう一柱について今回は言及は控えますけど。とにかくその上位存在が現れてから生まれたようで、これはもう嫌な予感しかしない。

 して、そんな世界で魔術師の頂点・魔神を目指す主人公立華紫闇。彼は帯や裏表紙のあらすじどおり序盤は最弱です。能力は低く、結果見下され、逃げ出し、涙も鼻水も小便も垂れ流します。ここまでみっともない主人公も昨今珍しい。だからこそ後半の逆転劇が映える。

 体術に特化した黒鋼流に弟子入りした紫闇。師匠にして阿修羅姫と呼ばれる黒鋼焔との、正真正銘命を賭けた修行の末に辿り着いた狂気はまさしくバーサーカー。その果てに、彼は頂に上り詰めることができるのか。

意地があるんだよ! 男の子にはなぁ!

 では総評。下克上ものとして、また成り上がりものとして面白かった。紫闇が憧れ、超えると宣誓した同級生の江神春斗とのやり取り、互いが互いに向ける思い、幼馴染の田中壱郎が紫闇に託した願い、いずれもも王道っちゃ王道ですが相当熱い。この話が今後どういう方向に進んでいくのか若干未知数ですが、二巻が楽しみです。

 ……と、まあそれは嘘偽りのない本心ではあるのですが。気になる点はまああります。まずは焔の祖父にしてかつて世界最強を誇った黒鋼弥以覇の台詞の末尾に散見される『w』など。ツイッターやら掲示板やらでの使用ならともかくとして、やはりこう、小説という形式において通常の会話文にこれが混じってくるとどうにもそこで引っ掛かりを覚えてしまう。焔の台詞にある(にっこり)などもまた然り。弥以覇のおちゃらけ具合や焔と弥以覇の関係性を端的に表したものとは思うのですが、それならそれで地の文や会話でうまく表現してほしかった。

2017年1月30日:筒狸

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