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『トリア・ルーセントが人間になるまで』感想

 ファミ通文庫、三田千恵さんの『トリア・ルーセントが人間になるまで』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にどうぞ。

思わぬ早さだったが

 前作から数ヶ月での新作ですが……個人的には『リンドウにさよならを』のほうが好み。今作では少々色々と詰め込みすぎな気がしました。

  • 主人公はジンドラン国第二王子のランスで、訳あって王位継承権を放棄している
  • ランスの兄と姉はランスに王位を継がせようと考えている
  • ともに旅をすることになるトリア・ルーセントは自身を薬と称し、人間らしい感情や感覚が極端に薄い

 箇条書きするとそうでもないように思えますが、実際読んでみると、ランスの話とトリアの話でそれぞれ一作書けそうな雰囲気。

 話の主軸としてはタイトルどおりトリアが人間らしさを手に入れることなのでしょうが、それ以外のエッセンスが結構強め。トリアとその護衛であるロサの関係はなんとなく察しはついていましたし、彼女達の関係性もまた『トリア・ルーセントが人間になるまで』に必要なものではありました。

 が、ランスについてはどうだったろうかと。少なくともトリアがどうこうという話にランスの生い立ちやそれをめぐる画策は、無関係とは言わないまでもあまり関係がなかったような。

 また、道中の視点も少々ぶれが目立ちます。基本的にはランス視点の三人称ですが、時折トリアの視点も混ざり、「あれ、今どっちの視点だっけ」となるような場面もちらほら。視点はやはり、どちらかに固定したほうがよかったのではないかと。

話としては好きだけど

 勿論話として面白くなかったわけではありません。トリアが少しずつ感情を取り戻していく姿、それに翻弄されるランスなど、見所は多かった。ただ、『リンドウにさよならを』を読んでいただけに色々と惜しいなと感じてしまう。少々厳しい意見になってしまったようですが、それもまた前作がしっかりと心に入ってきたからこそでしょう。

2017年5月18日:筒狸

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