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『ミス・アンダーソンの安穏なる日々』感想

 電撃文庫、世津路章さんの『ミス・アンダーソンの安穏なる日々 小さな魔族の騎士執事』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にどうぞ。

舞台説明が少し長いか

 人類と魔族の対立構造が存在する世界で、人類側で唯一魔術が使用できる女傭兵アンリ=L・アンダーソンを抹殺するよう命じられた騎士執事のアーティ。しかし彼は、家事全般は一流だが戦闘に関してはからっきしで……果たしてアーティは主から与えられた使命を完遂することができるのか。

 冒頭部から少しばかり、アーティがアンダーソンのもとに向かうことになった経緯を交えつつ世界観の説明が入りますが、少しその部分が長いようにも感じました。その部分で苦手意識を持つ方もいるでしょう。ただこういうのは異世界ものとしては避けては通れぬ部分ではありますし、説明の章として専用に設けられているわけでもないので、読みやすく入りやすかったように思います。

 ちなみにこのアンダーソン女史。あらすじに書かれていますが私生活は一言で言って自堕落。買ってきた食材は腐らせ、明らかに不要と思われるものが溢れかえり、アーティいわく「汚部屋ではなく汚宅」。それらを手際よく片付け、家を蘇らせたアーティの手腕は、ああ確かに戦闘はともかく家事は一流、いやさ超一流だわ。一家に一人、アーティフェルド=R=S・キュイエール。

 そんな感じの二人の同居。家事の合間に罠を張ったりしてどうにかアンダーソンを殺そうとするアーティと、それを日常の動作のように回避するアンダーソン。アーティが戦闘面でへっぽこ過ぎてどうにも彼女の強さが分かりづらいところはありますが、そのあたりは終盤で描かれます。

ほどよい塩梅と

 文体としてはこれといって癖はなく、簡潔すぎず描写に凝りすぎず。徐々に変化していく二人の距離感も丁寧で、緩急もありよかったと思います。

 さてさて気になるのはアンダーソンの正体と裏で暗躍していた男のこと。前者についてはまあ本命の読みとは別に三つほど浮かんでいますが、後者についてはまだ情報が足りないかな。続刊が待たれます。

2017年7月9日:筒狸

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