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『賭博師は祈らない』感想

 電撃文庫、周藤蓮さんの『賭博師は祈らない』の感想です。ネタバレはありませんのでご購入の参考にどうぞ。

電撃文庫としてはレア

 大勝ちせず、小銭を稼いで糊口をしのぐことから”ペニー”とあだ名されるラザルス・カインド。ひょんなことからそのルールを破ってしまい、それを清算するために奴隷の少女リーラを購入した彼。喉を焼かれて声が出せない彼女をメイドとして雇った彼だったが……

 発売前から言われていましたが、電撃文庫としては珍しい(であろう)ヒロインの立ち位置にいるリーラが奴隷という立場。それも労働力としてではなくもっと別の、はっきり言ってしまえば性奴隷という、ものによってはかなりきわどい場所にいます。

 他のレーベルでは割と見る状況ではありますし、ラノベ全体としてはそう珍しくないかもしれませんが、電撃で、という点では確かにそういう作品は覚えがありません。

 といっても、エロス方面に向かった作品というわけではなく、むしろそういう描写は皆無。ラザルスにしてもそういう目的で買ったわけではなく、単純に勝ちすぎた分を還元する目的だったのでさもありなん。

徐々に通い合う

 最初は彼の口癖どおり「どうでもいい」風に接していましたが、次第に彼女を守るように、また自分に何かあってもひとまずは何とかなるように奔走し始める(いや走ってはいませんしあくまでラザルスのペースですが)彼と、その彼の優しさに徐々に心を開いていくリーラ。

 二人の心が通い合うさまは、激しさこそありませんが絹のような触り心地のいいものでした。印象に残ったのはやはり、少々中身に突っ込みますが、ラザルスがリーラに過去を語る場面でしょうか。そのあたりから、明確に二人の関係性が変わったように思います。

一世一代の大勝負

 そのリーラを救うためにラザルスが取った行動。”ペニー”の名に反する一世一代の行動は、なかなかにハラハラさせられます。最後の一手は、本当にどうなるものかと固唾を呑みました。

 あと、リーラが愛らしい。件の場面以降は特に。自分を買ったラザルスに対しておびえていた彼女が、少しずつ変わっていく姿。時にはラザルスを動揺させたり、でも結局あたふたする姿を面白がられたり。

 奴隷として躾けられたことは間違いなく彼女にとっては絶望だったとしても、そんな中からラザルスに買われたことは、おそらく幸福といっていい。ラザルス本人はそんな風には考えていなかったとしても。そんなリーラが最後に……

2017年3月15日:筒狸

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