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『賭博師は祈らない3』感想

 電撃文庫、周藤蓮さんの『賭博師は祈らない3』の感想です。軽度のネタバレが含まれますのでご注意ください。また、前巻『賭博師は祈らない2』のネタバレも多少含まれます。

ラザルスの変化

 毒を盛られ、文字通り命を賭けながらも、エディスの婚約者でありかつてリーラを買おうとしていた男・ウィリアムに勝利したラザルス。その負傷も癒え、ようやく当初の目的地であるバースにたどり着いたラザルスとリーラ、そしてノーマンズランドから旅に加わったエディスとその使用人フィリー。しかし、ゆっくりと過ごしたいというラザルスの思惑に反し、バースで巻き起こっている騒動に、否応なく巻き込まれていく……

 毎回毎回命を張って賭博に挑む、言ってしまえば賭博師らしいラザルスですが、こちらの三巻ではそんなラザルスの心境の変化が、二巻以上に描かれています。むしろ三巻は賭博での駆け引きよりもそちらに重きを置いたという印象で、賭博のシーンに期待をしている方にはやや肩透かしかもしれません。

 かつて「どうでもいい」を口癖にしていた彼の口からその言葉が巻を追うに連れて減っていることからもそれは明らかですが、その実態は果たして。

一巻はラザルス、二巻はリーラ

 一巻の、リーラを買った当初こそどうでもいいと公言していたラザルス。それが一巻の後半にはそれは言葉だけのものとなり、二巻においてもその台詞に言葉通りの意味はありませんでした。

 三巻に至っては、とうとうその言葉を使う機会が明らかに減っているということは先述の通り。そして、リーラが関わることに対して「どうでもいい」とバッサリ切り捨てるようなことはなくなりました。

 その点を見るまでもなく、わざわざ時間を割いてリーラに「いつでも好きな場所に行っていい」としっかりと説明したり、トラブルに巻き込まれ始めたことでバースを出ようとした際、「ここを離れればリーラを浮浪者として捕らえる」と脅されて目つきを険しくしたりと、少なくともリーラに対してはラザルスにとって完全にどうでもいい存在ではなくなっています。

 一方のリーラについても、ラザルスはただの「自分を買ったご主人様」という認識はしていない様子。バースを出ようとしたときの脅迫、当初は「リーラが」という点は伏せられており、ラザルスはエディスやフィリーとともにリーラに町の外に出てもらうという思惑を抱いていました。

 しかしそれを口にする前にリーラ自身がそれを拒否し、ラザルスとともに残ることを決断。それ以外にもラザルスが相手に対してどう答えるかを予測してボードに先回りした答えを用意していたり、ある場面で彼に危機が迫っていると勘違いして相手との間に割り込みラザルスをかばおうとするなど、お互いの信頼感や意思疎通の具合がそこかしこに見られます。

 また、これは明確なネタバレですが、リーラの本名はリーラではなく、かつて彼女はその名を嫌っていたという事実が彼女自身が告白します。しかしラザルスの元に来て、彼からリーラと呼ばれるうちに嫌いではなくなったとのこと。

何よりも

 決定的だったのは、二巻で名前だけは出てきていたものの、今巻で本格的に登場した儀典長・ウェブスター、その妾の一人であるファニーとのダンスシーン。そしてその後に続くある場面が、二人の心の変化を如実に示しています。

 しかしその変化を、ラザルスがしっかりと受け入れているのかというとそういうわけではなく。それによって半ば必然的に賭博師としてのスタンスも揺らいでいることを自覚しながら懊悩するラザルスは、果たしてこれからどういう選択をしていくのでしょうか。

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2018年1月14日:筒狸

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