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『フェオーリア魔法戦記 死想転生』感想

 電撃文庫、旭蓑雄さんの『フェオーリア魔法戦記 死想転生』感想です。ネタバレはありませんので、ご購入の参考にでもどうぞ。

序盤が弱いか

 正直な話をしますと、こちらの一冊、最初はどうにも引き込まれませんでした。なんというか、「一人遊びの人形劇を見せられているかのようだ」とさえ思っていたほどに(その印象は一方では正しく、また一方では間違っていたのですが)。挙句、基本は傭兵であるトトポンの一人称なのに、視点が時折三人称に変わるものだから、さてこれはどうしたものかと。

 哲学的理論からの個々の考え方や、その世界における魔法のあり方などが長々と書かれていたことも、その一因かも知れません(長々と感じただけであって、実際はそうでもないのかもしれませんが。現にクレッシェンド(クレス)とトトポンの日常的な会話もそれなりにあったわけですし)。たぶん最後までそんな調子なら、私は別の本に手を伸ばしていたことでしょう。

 読み始めてしばらくは大きな動きはありませんでした。表紙の折り返しや各所で掲載されているあらすじの内容がそっくりそのまま全体の四割強を占めると考えてよいでしょう。クレスとトトポンのつながりや周囲の人々との関係、二人の物事の考え方、現在の世界の状況と戦争勃発の(表向きの)原因などが描かれています。無論戦争中ですから戦闘のシーンなど動きのある場面はありますが、というか序盤は防衛戦の場面ですが、それも割りとあっさり終わってしまいます。あとは上記のとおり。

 別にそういうのが苦手だとか嫌いだとかはありません。むしろ好きなほうではあると思います。ただ、好きなものでも食べ続けると飽きが来ます。以前蒟蒻素麺が好きだった男は、それを食べ過ぎたあまり腹を壊し、今はもう蒟蒻素麺を食べません。ええ、私です。

突然のジェットコースター

 それが中盤、一気に加速します。ようやく破の登場か、遅かったじゃないか。そこからはもうジェットコースター。それまでは長い長い上り坂だったようです。やばいぞこれ、加速力が容赦ない。なるほどこう来るかと、そこからは一気に読み終えることができました。

 全部が全部予想外ということはありませんでしたが、それでも私にはこの展開は読めなかった。まあギリギリまで開示されていない情報が極端に少なかったなどの要因はあるにせよ、それでもいい裏切り方だったと思います。 後半以降の展開は、ぜひとも実際に読んで確かめていただきたい。

 まあ、その後半にもちょっと気になるところがないわけではありませんが、それは話の根幹にもかかわってくることなので書くのは控えさせていただきましょう。

 と、いうわけで。ご馳走様でした。

2016年7月24日:筒狸

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