ラノベレーベルの特色と個人的評価【改訂版】

 ラノベと一口に言ってもそのレーベルからして大量にあり、そして今もなお増え続けています。そしてその分、廃刊に追い込まれるレーベルも。私が以前愛読していた『未完少女ラヴクラフト』が刊行されていたスマッシュ文庫もあえなく廃刊となり、そのタイトル通り未完となってしまいました。

 閑話休題。2020年11月現在、刊行が続いているラノベレーベルは、文庫サイズだけでも、

 これだけの数に上ります(刊行があまりにも不定期なレーベルやメディアワークス文庫などのライト文芸刊行レーベル、ヒーロー文庫などウェブ小説書籍化レーベル、美少女文庫などR18主体のレーベルは割愛しています。また、富士見ドラゴンブックもTRPGのサプリメントやリプレイ主体の為割愛しました)。

 まあ、上記の内コバルト文庫は現在では紙媒体での刊行は停止していますが。

 上記リストの内、KAエスマ文庫より上のものは主に男性向け、角川ビーンズ文庫以降は女性向けと分かれてはいますが、まあそれはあくまで出版社の想定ターゲットがそうであるという話。誰がどれを読むのか、どんな物を好きになるのかは個々人の自由であります。

 兎にも角にも。これらラノベレーベルの特色を、ひとつずつ見ていこうと思います。新人賞応募の参考や、お気に入りの作品発掘の一助にでもご活用ください。

 なお、私が今まで一度も読んだことがないレーベルにつきましては、現在までに刊行されているタイトルの情報から推察したものとなりますのでご了承をば。

目次

KADOKAWA系列のラノベレーベル

 はじめに一言。もう統合しろいい加減に。

 上記で上げたラノベレーベルの3割強が、KADOKAWA系列のレーベルです。詳細はそれぞれの項目にて取り上げますが、元来はスニーカー文庫とビーンズ文庫のみが保有するラノベレーベルだったはずが、気づけば大所帯に。

 書店勤めだった当時、「あれ、これ電撃だっけ? スニーカーだっけ?」と混乱した挙げ句、ファンタジア文庫でしたなんてことはよくありました。スタッフも、お客さんも。

電撃文庫

 ラノベという単語でまず真っ先に電撃文庫を思い浮かべる人も少なくないでしょう。毎月10日前後に刊行され、その刊行数は他のレーベルと比較して軍を抜いています。

 元々の創刊はアスキー・メディアワークス(創刊当時はメディアワークス)。紆余曲折を経て2015年にKADOKAWAの事業局のひとつとなりました。現在でも電撃文庫の裏表紙にて、KADOKAWAと連名でその名を見ることが出来ます。

 さて、まず間違いなくラノベ業界のトップシェアである電撃文庫ですが、刊行されるラノベのジャンルは非常に多岐に渡ります。恐らくは余程ニッチでない限りは、何かしらそのジャンルで数冊は刊行されていることでしょう。

 例えば『アクセル・ワールド』や『86-エイティシックス-』といったSF然り、『とある魔術の禁書目録』のような現代ファンタジー然り。当然異世界ファンタジーも、転生モノも非転生モノも各種取り揃え。ホラーなら『霊感少女は箱の中』、ラブコメなら『俺を好きなのはお前だけかよ』エトセトラエトセトラ。近年では見ませんが、スペースオペラものも『スターシップ・オペレーターズ』などがありました。

 メディアミックスも活発です。毎年1作は必ず何かしらがアニメをやっていますし、コミカライズも出版社の枠を飛び出して行われています。

 兎にも角にもなんでもござれのイメージが強い電撃文庫ですが、その分大賞応募者も他社とは比べ物にならず、最盛期ほどではないにせよ受賞そのものが非常に狭き門。その分、受賞して出版にこぎつければ、レーベルの規模的にも、新刊コーナーの目立つところに置かれるのは間違いないでしょう。

 受賞後の作家育成にも力を入れていると感じられます。例えば第23回大賞受賞の『86-エイティシックス-』は2020年11月現在で8巻まで刊行、アニメ化も決定していますし、同金賞を『賭博師は祈らない』で受賞した周藤蓮さんは、すでに次作の『吸血鬼に天国はない』を4巻まで刊行、更に星海社FICTIONSにて『髭と猫耳』も出されています。

 2019年の第26回大賞受賞の『声優ラジオのウラオモテ』もすでに3巻まで出ており、コミカライズも連載中。無論根本では、作家の皆さんのモチベーションなどによるところが大きいとはいえ、1冊だけだしてはい終わりという場合も見られる中で、しっかりとフォロー出来ているのではないでしょうか(何処から目線だ)。

刊行タイトル抜粋

角川スニーカー文庫

 角川文庫の系譜として誕生し、元祖ラノベとも目されるのが月頭前後に刊行されている角川スニーカー文庫。今や角川文庫から刊行されている『氷菓』を始めとする『古典部シリーズ』も、もとを正せばこのスニーカー文庫から出ていたタイトルです。

 かつてはガンダムシリーズのノベライズや『涼宮ハルヒシリーズ』など一時代を作り上げていたスニーカー文庫ですが、今ではその見る影はなく、角川系列のレーベルの中でも一位二位を争うほどの衰退っぷりというのが個人的な印象。確かに『この素晴らしい世界に祝福を!』などのヒット作はありますが、このすばは元をたどれば『小説家になろう』連載作品。純粋なスニーカー文庫とは言い難いのではと思います。

 とはいえすかすかこと『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』やその続編であるすかもかこと『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』などもありますし、実のところ衰退というほどのことではないのかもしれません。

 ただ、やはり先述の電撃文庫と比較すると今ひとつパッとしません。一時期はエロ小説レーベルに片足突っ込んだような状態になりかけていましたがそれも鳴りを潜め、よくも悪くもより丸くなってしまった印象。

 受賞者の新人育成はどうなのかというと、少なくとも続刊や新作の刊行から見るに比較的精力的といっていいかもしれません。ただ、1冊だけ出して他のレーベルに移ったり、そのまま出していない方もちらほらいますが……

 というか、ここ数年スニーカー大賞は大賞受賞者が出ていない……!

刊行タイトル抜粋

富士見ファンタジア文庫

 毎月二十日前後に刊行となる富士見ファンタジア文庫、現在ではファンタジア文庫の略称が公式サイトでも用いられていますが、正式名称としては今でも富士見ファンタジア文庫のようです。

 その名前が示すとおり、古くは『スレイヤーズ』や『魔術士オーフェン』、近年では『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』、『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』など、現代異世界を問わずファンタジー要素が含まれる作品が多く刊行されています。その一方で『フルメタル・パニック!』や『天地無用!』などのSF要素が入った作品、『冴えない彼女の育てかた』などの青春ものも出ており、名は体を表す、というほどファンタジー路線一辺倒というわけではない様子。

 ただ、基本的にはファンタジーが強いといっていいでしょう。大賞受賞作も、ほぼほぼファンタジーものです。

刊行タイトル抜粋

MF文庫J

 25日前後に発売されるMF文庫J。いくつか読んではいるのですが、いかんせんどうにも……断言すれば微妙なものが多い印象。

 異世界召喚ものの代表格としての地位を築いた『ゼロの使い魔』やロングランとなっている『緋弾のアリア』などもありますが、いずれにしても古い作品であることに変わりはないですし、『Re:ゼロから始める異世界生活』はなろう連載。個人的には『最近では自社レーベルで新人育成が上手くないレーベル』といった印象です。

 この印象については私の周辺も概ね異口同音のようで、『印象薄すぎ』とか、もっとひどいものだと『イラストさえよければ話の上手い下手は二の次にしているレーベル』とさえ言われています。

 ただ、先述のもの以外にも『ノーゲーム・ノーライフ』や『ようこそ実力至上主義の教室へ』など看板タイトル数についてはスニーカー文庫よりも多い感じがしますし、安定しているといえば安定しているのかもしれません。ただやはり、この両作においても自社新人賞などからの登場ではないので、やはり新人育成はあまり上手くないのでしょう(『ノゲノラ』作者の榎宮祐さんはラノベデビュー作ではあっても元々漫画家やイラストレーターとして活躍されていた方ですし、『よう実』の衣笠彰梧さんは挿絵のトモセシュンサクさん共々エロゲメーカーのあかべぇそふとつぅ出身)。

 こちらも電撃文庫に勝るとも劣らないごった煮具合ですが、何かしらファンタジー要素あるいはバトル要素が入っているものが多くを占めている印象があります。

刊行タイトル抜粋

ファミ通文庫

 月末頃に刊行されているファミ通文庫といえば、やはり青春ものに強いイメージがあります。『”文学少女”シリーズ』や『この恋と、その未来』など、ボーイミーツガールの登竜門的な立ち位置に感じます。

 勿論それだけではなく、『覇剣の皇姫アルティーナ』などのファンタジー作品もあり、他にも近年ではなろう書籍化やカクヨム書籍化も多く行われています。それに加え、ソシャゲのノベライズに関してもその種類は多め。

 とはいえどこかパッとしない印象があるのは拭いきれません。強いと評した青春ものにしても、かつてほどの勢いはありません。アニメ化された作品もそれほど多くはなく、何かもう一手欲しいところ。

刊行タイトル抜粋

角川ビーンズ文庫

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ビーズログ文庫

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集英社のラノベレーベル

ダッシュエックス文庫

 コミックとしては週刊少年ジャンプで有名な集英社から出ているのが、おおよそ毎月20日頃に刊行されるダッシュエックス文庫。その創刊自体は2014年と若い……のですが、ダッシュエックス文庫にはその前身があります。

 その名もスーパーダッシュ文庫。『R.O.D』や『パパのいうことを聞きなさい!』などを刊行していたレーベルで、両作品とも完結時にはすでにダッシュエックス文庫が創刊されていましたが、スーパーダッシュ文庫として発行されています。

 更にそのスーパーダッシュ文庫にも前身といえるレーベル・スーパーファンタジー文庫が存在し、その創刊は1991年。電撃文庫が1993年の創刊ですから、実質その電撃文庫よりも老舗ということになります。とはいえ、スーパーファンタジー文庫から引き続いた作品はほとんどないのが実情ではありますが。

 ちなみにダッシュエックス文庫に改称してから、新人賞では大賞が出ていません。また、他の受賞者の方も、あまり刊行が続いている印象がなく、育成についてはあまり上手くないような印象です。

刊行タイトル抜粋

コバルト文庫

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講談社のラノベレーベル

講談社ラノベ文庫

 少年マガジンの講談社もラノベレーベルを保有しています。こちらは正真正銘2011年初参入。その分まだまだ主要レーベルとして数えるには厳しい点もありますが、それでも『アウトブレイク・カンパニー』や『クロックワーク・プラネット』などアニメ化作品もあり、また新人発掘にも精力的。ただ、その後のレーベル内での育成については、やや疑問が残ります。

 1冊だけ、あるいは受賞作のシリーズが終わったらそれ以降の刊行なし。調べてみたら他社レーベルやなろうで新作が出てるというのがよく見られます。とはいえ、もう再三繰り返していますが、このあたりのことは作家さんのモチベの都合が一番大きいわけですが。

 発売日は概ね2日前後。しかし年末などに限っては前の月にずれ込むことがあり、また作品によっては発売日がずれることもあるようです。

 こちらもどこかパッとしないレーベルと言わざるを得ません。『進撃の巨人』などの人気コミックのノベライズ作品もあるので、気になった方はそこから入ってみてもよいのではないでしょうか。

刊行タイトル抜粋

講談社X文庫ホワイトハート

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その他出版社のラノベレーベル

ガガガ文庫

 少年サンデーで知られる小学館のガガガ文庫、毎月18日頃に発売されているこのガガガ文庫の創刊は2007年と比較的若いレーベル……なのですが、こちらにも前身と呼べるレーベルが存在します。

 その名は、スーパークエスト文庫。ゴジラやガメラのノベライズでご存じの方もいらっしゃるでしょう。しかし創刊当初、ガガガ文庫がラノベ初参入であるかのごとき扱いをされていました。

 特色らしい特色はないと先述しましたが、ガガガ文庫の場合ジャンルという意味においては確かにそうではあります。しかしながら『人類は衰退しました』などのある種奇妙ともいうべき世界観の作品などの実験的な作品も多く、『妖姫のおとむらい』のように他のレーベルではまず見られない作風のものも少なくありません。

 電撃文庫を幅広く無難にこなす汎用型とするならば、ガガガ文庫は特化型、でしょうか。少し違う気もしますが。

 受賞作に関しては、他のレーベルと比べるとファンタジーよりも現代ものが多い印象です。また、他社レーベルではあまり見ない『百合』『ミステリー』『ホラー』などもよく受賞しているようで、この辺りも他と一線を画しているといえるでしょう。

刊行タイトル抜粋

GA文庫

 SBクリエイティブ発行のGA文庫といえば、日本クトゥルフ神話界においてあらゆる意味でインパクトを残した『這いよれ! ニャル子さん』を世に残したレーベルで、こちらもまだ比較的若いレーベルです。発売は毎月15日前後となっています。

 新人発掘も精力的で、先述のニャル子さんの逢空万太さん、近作では『りゅうおうのおしごと!』で知られる白鳥士郎さんなどもGA文庫大賞出身の方々です。ちなみに、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の大森藤ノさんも大賞出身者ではありますが、元々ダンまちはネット小説が発祥の作品となっています。

 ……とはいえ、スニーカー文庫などと同様に滅多に大賞が出ないレーベルでもあり、加えてイラストレーター交代が他のレーベルに比べて多いように感じます。これが単に作家さんとイラストレーターさんの問題なのか、それとも編集部に問題があるのか……

刊行タイトル抜粋

HJ文庫

 『六畳間の侵略者!?』を擁するHJ文庫は、毎月頭頃に発売されています。全体的に長期シリーズ化する作品が多く、刊行数が2桁に達しているものも少なくありません。

 なろう初出の作品や他社からの移籍作品もわずかながらあり、また他社で活躍されている著者の起用も少なくありません。しかし新人発掘に全く力を入れていないかというとそういうわけでもなく、GA文庫の『異能バトルは日常系のなかで』の望公太さんはここの出身者です。

 ただ、どことなく影が薄い感があります。私自身がHJ文庫をほとんど読んでいないということも原因の一つではあると思いますが、やはり他の大手出版社からのレーベルと比べると若干押され気味ではないでしょうか。

刊行タイトル抜粋

オーバーラップ文庫

 メディアファクトリーから独立したスタッフによって設立されたオーバーラップ社のラノベレーベル……ですが、当初私の周辺では『IS <インフィニット・ストラトス>』を出すためだけのレーベルとすら言われていました。流石に酷すぎる物言いとも思いましたが、当時は確かにそんな印象もありました。

 現在では『灰と幻想のグリムガル』などの看板タイトルも生まれ、ISの刊行ペースが非常に極端に遅いこともあってその感じはなくなりましたが、HJ文庫同様まだまだ影は薄いと言わざるを得ません。なお、刊行は毎月25日頃となっています。

刊行タイトル抜粋

KAエスマ文庫

 京都アニメーションが発行するラノベレーベルであるKAエスマ文庫は、他のレーベルとは少々趣が異なる点があります。

 それは、「一般の書店には流通していない」という点。ヴァイオレット・エヴァーガーデンを見て原作を読みたくなって、でも書店に置いていないことに困惑した方も少なくないのではないでしょうか。

 通常、出版物は『トーハン』や『日販』といった出版取次を通じて各書店に入荷、読者の手に渡ることとなりますが、KAエスマ文庫の場合はそういった取次を介した販路がありません。

 入手する方法は、京アニに申請して取引が成立した一部の書店か、公式通販の『京アニショップ!』を利用するかのいずれかのみ。Amazonにすら、マーケットプレイスで登録されたものを除けば商品ページすらありません。

 取引書店の一覧は京アニ公式のこちらのページから確認出来ますので、ご参照ください。

 また、第10回まで開催された京都アニメーション大賞は、現在当面の間開催が見送られています(公式の発表)。

刊行タイトル抜粋

一迅社文庫アイリス

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まとめ

 最後に個人的なラノベの好みを申し上げますと、私はドンパチやり合うよりも『賭博師は祈らない』のような心理戦、『Missing』のような伝奇、あるいは怪奇もの、『“文学少女”』のようなときに心をえぐるようなものをよく読む傾向にあります。

 とはいえ、かつての知人の言を借りるならば、「どのジャンルを勧めればいいか分からない乱読家気質」でもあるようなので、正直なんとも言えないのではありますが。

 ただ、現時点において最も読み返した回数が多いのは、やはり『Missing』です。新装版発売の発表があった際に変な声を出したのはよく覚えています。その前日に野村美月先生の復活を目にしたときも同じ反応を示しましたけども(そして2番目に読み返したであろう作品が『“文学少女”』)。

 それではこれにて。本記事が皆様の愛読書探しの一助、あるいは新人賞応募への参考にでもなれば幸いです。

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