無銘図書館

元地方書店員が軽めに見る紙媒体の今後

最強の本棚・電子書籍

 電子書籍は紙の書籍にはない利点が数多くあります。例えばいちいち外に出なくてもすぐさま欲しいものが手に入ること。これはAmazonなんかとも一緒ではありますが、電子書籍は商品到着を待たなくていいので、ダウンロードさえ済ませてしまえばすぐに本を開くことが出来ます。

 しかしそれよりもやはり、電子書籍はデータだからかさばらない点が一番の利点ではないでしょうか。紙媒体の書籍百冊を保管するにはそれなりの本棚が必要ですが、電子書籍百冊の保管で場所に困るという話はありません。そして購入履歴があれば(サイトからデータが消えさえしなければ)、端末から削除したとしてもまたダウンロードできる。これが紙媒体だったら、一度手放した本はもう一度購入するしかありません。その点において経済的にも優しいといっていいでしょう。

紙媒体に勝ち目なし?

 私は電子書籍より紙派です。これは元書店員関係なしに、単にそういう嗜好なだけ。電子書籍も幾つか持ってはいますが、どうにも紙と比べて没入感というか、頭に入ってくる感じがありません。

 ただこれは完全に個人差の話ですし、タブレットなど電子書籍の閲覧に適した端末が発展したことで、結果として紙媒体の売上低迷に繋がっているという状況はあるでしょう。

 では紙媒体はもう滅ぶしかないのか? というとまたそれも違う。

 私のように紙でないと読んだ気になれないという人は一定数以上いますし、紙媒体には紙媒体にしかない利点があります。

 例えば辞書の場合。これが電子書籍、あるいは電子辞書だった場合は目的のものを引くのなら電子のほうが圧倒的に早いでしょう。他方、特に目的はなくなんとなくで単語を調べたい場合は紙媒体に軍配が上がります。適当にページを開けばそこに多数の単語の情報が載っているのですから。

 でも、なんとなくで単語を調べたいとかそういう場面が果たしてあるのかというと……まあ普通はないかもしれません。私自身書いていて「普通はやらないかなあ」なんて思っていました。ただ、辞書ではやらないかもしれませんが、例えば『悪魔辞典』とかそういった辞典系の資料であるならば、そういう機会もあると思います。またクトゥルフ神話TRPGでシナリオを作るときに、先にどんな神話生物や神格を出そうかと漠然と探す際にも、先述のやり方が使えますので紙媒体のほうが有利です。

  •  また、紙媒体にしかない特性として、付録の存在があります。女性向け雑誌なんかだと化粧品やエコバッグが付録についていたりしますし、男性誌でもファッション系なら財布や鞄がついてくることがあります。子供向けのコロコロコミックなんかカードゲームの体験デッキをつけたりしていますし、女児向けのちゃおやなんかでは漫画家セットと称して割とガチ目のセットを付録にしたこともあります。

     コミックやライトノベルでは限定版の存在もあります。キングダムなんかはフィギュア付限定版を用意したことがあります。これがかなり大きく(フィギュアとしては一般的なサイズでしたが)、もはやどちらがおまけか分からない。

    今後更に発展していったら

     しかしやはり利便性で言ったら電子書籍の圧勝です。クトゥルフ神話TRPGの例でいくと、ルールブックなんかは毎回持ち歩くには少々大きいですし、そこにサプリ系が加わってくると重量もかさむ。目的がはっきりしているのなら、電子書籍を利用したほうが懸命でしょう。電子書籍版があるのなら。

     そう。クトゥルフ神話TRPGのルールブックは電子書籍版が存在しません。そしてそれに限らず、電子書籍が存在しないものは多々あります。更に、2017年現在、電撃文庫なんかは電子書籍版は紙媒体の発売日から一ヶ月ほど遅いなど、欲しい本を発売日に電子書籍で、というのは現状まだまだ難しいところがあります(勿論現時点においても電子書籍と紙媒体が同時発売のものもありますが)。

     付録などの存在を考えるに、出版社側はまだ電子書籍に対してそれほど力を入れる気はないように思います。ただ、先述のような物質ありきの付録ならともかく、ドラマCDなどデータでも可能な付録の場合、今後電子書籍版にも限定版などが誕生する可能性はあります。今のところは総合的にはまだまだ紙媒体に軍配が上がりますが、もし今後出版社が電子書籍重視に傾いて、発売日も紙媒体と一緒になったら、そしてあらゆる書籍が電子書籍化したら……地方書店の苦難は、終わりそうにありません。

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    2017年8月29日:筒狸

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