無銘図書館

元地方書店員が軽めに見る紙媒体の今後

 地方の本屋を利用される方は誰しも疑問に思うことだと思いますが、何故東京と地方とでは発売日にズレが生じるのか。この発売日のズレ、私が子供の頃からすでにそうだったことに加え、かつて書店勤務だった母の時代からそうだったみたいですから、最低でも半世紀は変わっていないということ。そのあたり日本らしいいい加減さというか負の面が垣間見えます。

 ちなみに一般にいう発売日と書店に並ぶ日に乖離があることについては、こちらの記事にある程度詳しく書かれていましたのでご紹介(別サイトに飛びます)。

買いたい本が発売日に書店にない理由が衝撃的…

発売日は地方によって変わる

 実のところ上記の記事に書かれていることがほぼほぼその通りで(実際に書店の人間に聞いているのだから当たり前ですが)、地方の人間にとってはこれがまさに悪の温床。挙句日曜日には入荷がなかったり悪天候などの原因で流通の停滞などが起きたりでもう本当勘弁してくれといったところ。

 ただ、この記事にある『取次(問屋)に入る日から入荷日を推察』ということに関しては少し違っていて、入荷日はその地方によってほとんど明確に決められています。私が住んでいる地方の場合は『取次入荷日≒発売日から雑誌は二日遅れ、書籍は一日遅れ』。『明後日』ではなく『二日遅れ』、『翌日』ではなく『一日遅れ』です。どういうことか。

 先述の通り、日曜日には入荷がありません。つまり、土曜に取次に入った雑誌(我々の場合東京発売日と言っていましたが)は月曜ではなく火曜に入荷します。『明後日』ではなく『明々後日』ですね。

 同様に、土曜に東京発売となった書籍は月曜入荷。東京発売日が分かっていてそのあたりのことを知っていれば推察の必要はありません(実は、書店によってはたまーに他の書店よりも早く入荷しているタイトルもあるんですが、その辺は突っ込んだ話はなしにしましょう)。

全国一斉発売に立ちはだかる壁

 となれば発送するのを早めれば、もしくは発売日当日に出ている地域が発売を遅らせれば全国一斉発売が可能になるのではないか。そう思い至るのは当然の帰結です。実際にそうして全国一斉発売を行っているものがあります。

 ワンピースは最早説明の必要がない大ヒットコミック。これに関しては私の地方でも東京と同時発売です。ただこれの場合、一定以上の売上がほぼ確定しているからこそできることだと思いますが。

 少し古いデータですが、統計局にある出版年鑑のデータによれば二年前の書籍発行点数は約80,000。雑誌は3,600ほど。そしてこのデータにはおそらくコミックが含まれていません。

 加えて、これはあくまで点数ですので実際に発行される数はこれの何倍何十倍にも及ぶでしょう。出版不況と言われる中で実はこれだけの数が世に出回っていることに驚きます。そしておそらく、今年にしても大きな変動はないと思います(手元にその資料がないのでこちらは完全に私の想像ですが)。この量を全国一斉となると、やはり難しいでしょう。

 私は本屋の前はゲーム屋に勤めていました。ゲームの場合はよほどのことがない限りコンシューマは木曜(ポケモンなど一部例外あり)、エロゲは金曜(昔は一部のメーカーが木曜に出していましたが、今は金曜に統一されているようです)に全国一斉発売となります。他に扱ったことがあるものとすればTCGですが、これの場合も発売は全国一斉(公認店限定先行販売などは除きます)です。ただ、これができるのは点数が比較的少ないから。

 ざっくりウィキペディアで調べたところでは、2015年に日本で発売されたコンシューマゲームタイトル数は約460タイトル。この時点で雲泥の差。比較対象になりません。アダルトを含むPCゲームを加えても焼け石に水なのは火を見るよりも明らか。

 現状の取次を介したシステムで発売日を合わせるということは、つまり全国にその商品が行き渡るまで保管できる倉庫が必要であるということ。それもかなりの規模の。それらの建設費から管理運営費など諸々考えると、現実的ではありません。

 では、配送だけしてしまって全国に出版物が行き渡るまで店頭には出さないというシステムはどうか。

 実際ゲームの場合は発売前日までに商品が店に届くようになっていますが、これもやはり厳しい。発売日が来るまで大量の在庫を抱えて置けるだけのスペースは書店にこそありません。

 ちなみに雑誌(というかムックなんですが)のカードゲーマーは、実はTCGを取り扱っている店の場合東京基準の発売日で売り出すことが可能です。こちらは出版流通以外にもTCGとしての流通ルートもあるので。他にもでゅえるメイトなんかは、形態こそ出版物ですが出版の流通ルートではなくTCGの流通ルートに乗っていますので、全国一斉発売可能な書籍ということになります。通常の書店には出ませんが。私がいた書店の場合カードショップも兼ねていました(というか私がTCG担当していました。最後のほうはコミックも兼任していましたが)のででゅえるメイトも仕入れられましたし、カードゲーマーも東京合わせで発売も可能でした。まあ、あくまでメインは書店ですのでカードゲーマーはそちらの流通に任せて、でゅえるメイトは注文が入ったら発注する程度でしたが。

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    2017年8月29日:筒狸

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